豆知識
予防歯科の正しい考え方
~予防歯科の正しい考え方、「治療」とはどう違うのか?~
皆さんが歯医者で痛い思いをしている人の共通点は「痛くなってから通院する」、この一つです。
痛みが出てからの治療では、その歯は寿命を短くするだけです。
「痛くなる前の通院」
これが注目されている新たな考え方。それが「予防」なのです。
~日本人が知らない予防歯科の考え方~
予防歯科とは?
近年、歯科医療では「予防歯科」が大きく注目されています。
今回「予防歯科」の背景にある、海外と日本の違いについてお教え致します。
~「予防と治療」の明確な差~
「予防」と「治療」の関係性を考えると「予防歯科」が見えてきますので、そこからご説明しましょう。
「予防」とは、「予め」「防ぐ」という事であり、何かが起こる前に、それを防ぐという行為です。
つまり、まだ「何か」は起きていない状況が、この予防です。
歯に異常、病気が起こる前、それを未然に防いでいこうという考え方が「予防歯科」の考え方です。
これに対し、「治療」とは「治」という、病気などの状態を元に戻すという意味の言葉と、
「療」という病気をなおすという意味の2つから成り立っています。
つまり、「治療」とは病気や怪我を治して元通りにするという意味です。
ですが、残念ながら歯科治療において「治療」という言葉は存在しないのです。歯は元通りに治療することは決してできないのです。
~歯は削ったら決して元通りにならない~
歯はカラダで唯一、「再生機能」がない組織です。
他の人体の組織とは異なり、削ったら二度とは再生せず、元に戻らないカラダの一部なのです。
放っておいても虫歯が勝手に治ることも、固定をして自然と歯がくっつくなんという事もありません。
歯質は人体の組織の中で自己治癒(自分で治る)能力をもっていない(厳密には自己治癒能力の弱い)脆い身体の一部なのです。
~歯を悪くすると、悪化の一途をたどる一方になってしまう~
前述したとおり、歯牙は自分で再生することは不可能です。
もし、虫歯や歯周病で悪くなってしまうと新しく再生することはありません。もう、諦めるしかないのです。
しかし、そのまま悪くなる事を放置したままにするわけにはいきませんので、悪くなった部分を削ったり、除去したり、人工物で埋めたりするしかないのです。
しかし、歯は一度削ると寿命が10年縮むと言われています。
平均的な歯の寿命が50年程度と言われています。なので、一度詰め物を行うとそこから10年寿命が縮みます。
また、保険内の金属の詰め物は5年程度で物性劣化が始まります。
劣化したらまた新たに詰め物を装着せねばならず、そこから更に削り、また更に寿命が縮みます。
「予防」を怠ると、その繰り返しなのです。
~若年層でもで入れ歯になる~
小学生の頃、乳歯との生え変わりの時期に永久歯が虫歯になり、治療を何度も行っていると、30代等の若さで抜歯になってしまうことも珍しくはありません。
歯医者さんに聞けばわかりますが、30代で入れ歯生活を送る方も少なくはなく、苦労されている方も多いのです。
~天然歯(何も削ったりしておらず、虫歯などになっていない歯の事)に勝るものはない~
どんなに歯科技術、歯科医療が進歩していても、自らの歯(天然歯)に勝るものはどこを探してもないのです。
しかし、そのような大切さをあまり気づいてない方々も多いのも事実です。
歯磨きもあまり習慣づいておらず、痛くなってから歯科医院に駆け込むという経験をする方は多いのではないでしょうか?
しかし、ここで強く言える事は、痛くなってからではすでに「予防」に関しては手の施しようがないのです。
~歯の寿命とは~
何度も繰り返しになってしまうのですが、歯科治療は「前の歯の状態に戻す」ことはできません。
特に神経まで虫歯が到達し、抜髄(神経を取る事)になってしまった歯は通常の歯に比べて寿命が飛躍的に短くなってしまいます。
これは例えば、家の大黒柱を大きく削り落としていくようなものです。
~神経を抜いた歯の耐久性は?~
前述したとおり、神経を抜いた歯は通常の歯に比べたら断然耐久性が落ちます。
外部からの衝撃や、固いものを食べた瞬間に簡単に崩れてしまうのです。
一度神経を抜くということは、それほどひどい状態だったということを改めて認識して頂きたいです。
そこを意識いただくだけでも自然と未然防ごうという意識が働きます。
それも予防の一つですね。
~老人には歯がない。これは日本だけの常識!?~
お口の中には親知らずをぬかして、28本歯があります。
そこで以下の数字があります。
スェーデン75歳以上:19.5本
アメリカ85歳以上 :15.8本
日本80歳以上 :6.8本
年齢に差異はありますが、これが世界一の長寿大国日本が持つ歯の保存本数の現状です。
日本は世界の中では長寿の国ですが、同時に歯で苦しんでいる代表的な国です。
歯科業界では、大きく遅れをとっている歯科発展途上国だということは非常に有名な話なのです。
しかし、これも「予防」意識で本数を増やしていく事は可能なのです。
~日本の保険制度と日本人の歯の関連性~
世界でも日本は保険制度の確率している珍しい国です。
日本は世界でも珍しい程完璧な保険皆制度をとっています。
医療保険に加入しているため、医療費は実際の治療費の1~3割負担で済みます。
これは、世界では驚かれるほどの安さです。
下記の画像をご覧ください。これは、先進各国の歯の根の治療(神経の治療)にかかる費用の比較表です。
アメリカは一番高額で10万8千円。
一方日本は最安の約5800円です。
7カ国平均約50500円で、日本の約8.5倍の格差があります。
根管治療だけがこうした結果なのではなく、他の治療においても同じ格差が出ます。
他国は歯科保険制度がなく自費での診療を行っているためここまで治療費に差がついてしまうのです。
しかし、実はここに欠点が出てきてしまいました。
日本の保険制度は、「悪いところを削り、悪いと所だけ治し、代わりのものを詰める」のみを適応範囲としています。
つまり、「歯は悪くなってから」「治療して削り治せばいい」という意識が根付いてしまったのです。
これは、歯科医・歯科業界にも責任があり、「いかに治療をするか」ばかりを考え、
「どうしたら歯の病気を防ぐことができるか」という一番大切な「予防」という概念がないがしろにされてきてしまったのです。
決して、国民皆保険での医療の潤沢がすべて悪いわけではありません。
医療を受ける側、医療を施す側、双方の意識から「未然に防ぐ」という意識を欠いてしまったのです。
こうした間に欧米とは意識差がついていき、先進国のなかでも類を見ないほどの歯科発展途上国になってしまったのです。
では、具体的に欧米諸国と日本との“差”はいったい何なのでしょう?
それは、欧米諸国と日本の“歯医者”への考え方を見てみるとわかります
どうしたらいつまでも歯を残すことができるのか??
~欧米諸国と日本、歯に対する考え方の違い~
欧米諸国は何故、歯を残すことが出来るのでしょうか?
長寿大国日本が、歯が残らない民族なのでしょうか?答えは簡単。
「定期的に歯をメンテナンス・クリーニングしているかどうか?」ただこれだけです。
痛くなってからの治療では手遅れということを知っている欧米諸国は治療に保険がきかないぶんだけ、意識が予防に自然と行くのです。
ですので欧米諸国では、痛くなってからどうにかする“治療”ではなく、
普段からの“メンテナンス”に力を入れているから国民全体の歯の残存本数が向上したのです。
~歯がない生活の苦しさ~
あなたが老人になった時、自由に好きなモノを食べられる生活と、
食べるものを制限され、味覚も悪く、自由に好きなものを食べることができない生活のどちらがよいでしょう?
老人になったら、なんでもいいやと思っている方はきっとお口の中への意識が低い方だと思うので、もしかしたら40代前半で口腔内に異常が起こるかもしれません。
30代で総入れ歯になった患者さんは、味覚が鈍磨し、口臭が気になり、食事に出かけてもこっそりとトイレに行き入れ歯を洗うという非常につらいと聞きます。
ところで、歯は何故抜けてしまうのでしょう?じつは、歯が抜ける原因の半分がある病気が原因なのです。
これは以前のblogでも書きましたので、以下をご参照ください。
↓
現在、アナタを含め日本人ほとんどが歯周病にかかっているという状況です。
これは、日本が「予防歯科」という方針をとらなかったため、仕方がないことでもあります。
では歯周病を防ぐにはどうすればいいの?
これは以前からblogにも常々書かさせていただいていることなので、もう見飽きた方もいるかと思いますが、簡単に言えば「歯磨き」を丁寧に行うことが大切なのです。
しかし、多くの方が自己流の歯磨きで、しっかりと磨けていないため、毎日歯を磨いていたとしても歯周病になるという方も多くいます。
また、「歯ブラシ」だけの歯磨きでは全体の内の8割しか汚れをとることができないため、残りの2割は口の中に留まり、口腔内を徐々に悪化させてしまいます。
大切なことは、正しいブラッシング方法を知り、ご自身のブラッシングでは取れない部分を歯医者さんで定期的(理想は3ヵ月毎)に診てもらうことです。
定期検診という癖をつけるだけでアナタの歯は歯科先進国の欧米諸国並に歯を一生守って行くことができるのです。
~まとめ~
①「痛くなった時」に行く歯医者さん、という考え方ではいけない。
②「歯を削る」という行為はといずれは「歯を痛める」という行為にも繋がってしまう。
③大切なのは、「治療」ではなく「予防」
④定期健診で歯医者さんに行く習慣を身につけ、虫歯・歯周病から歯を守る。
いかがでしたでしょうか?一概に「予防」といっても、その大切さが一人でも多くの方々に伝わっていただけたら幸いです。
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